な、何これ!
それにこの甘い匂い。


その白く柔らかい物が舞い落ちる中
視線を辺りにうつすと
ユウキがすぐ側で私の事見下ろしてて
その両手いっぱいに花束を抱えてた。

その花の山
種類は様々だけど色は全て白一色で
その混ざり気のない純粋な美しさに
目が釘付けになる。


「アキ、何やってんのお前。
超〜偶然だな」

「………」

「なーんてな。
携帯出ないかと思ったら
やっぱりここにいた。
こんなとこで昼寝?
つーかもう夜か」

「……面白くないし」

「ははっ、てかこの前と逆?
あん時はこうやって寝てた俺の前
いきなりお前が現れたんだった」

「……うん」


驚いてなかなか言葉が出て来ない私
柔らかい表情で見つめたユウキは
花束を砂浜に静かに置いた後
私の横に座った。


月の明かりとほのかな街頭が
私たちを照らす。


ユウキは遥か遠くの水平線眺めるように
目を細めながら


「なんかつい最近の事なのに
すっげー昔の事みたいだ」

「うん、私もそう。
凄く不思議な感じ」


あの朝の海水の冷たさ
焦げ付くような太陽の熱さ
それに鋭いユウキの眼差し
全てリアルに浮かんでくるけど

あの日とは違う感情が
心の中埋め尽くされてて
まるっきり新しい自分みたい。


本当にそれぐらい
この数日は色んな事ありすぎた。


「でもさ、いきなりお前が目の前現れて
しかも全身ずぶ濡れだし
俺どんだけ驚いたと思ってんだよ」

「え?
あの日ユウキがここにいたのって
まるっきりの偶然?」

「にきまってんだろ。
どんだけ俺をストーカーにしたいんだよ。

……っても完全には偶然とは言えねーか。
お前元気ねー時よくここに来て
一人で海眺めてたろ。
だからそのうち俺も嫌な事あると
ここ来るの習慣になっちまってさ」


そう穏やかに話す
ユウキの横顔をジッと見つめ
更に続く彼の言葉に耳を傾ける。


辺りに広がる甘い花の香り。