酷評まではされないまでも
まだまだ厳しいその評価が
凄く“らしく”て
クスクスと笑いながら問い掛けると


『ちげーよ本題はこっから。
あのさアキ、俺らのライブ
ステージ袖で見てろよ』

「え!そんなの無理だよ
だってやたら警備厳しいし。
それに何でわざわざ」

『それなら大丈夫
パス見せればステージ横で
ライブ見れるように手配しといたから。
こんな経験滅多にないだろ?

それにすぐ側で俺の歌
お前に聞いててほしいんだ』


そんな甘いキメゼリフ
言われ慣れてないし
顔途端に真っ赤になる。


「………」

『頼むよ』


囁くようなユウキの言葉。

自分の声質知ってて
わざとそんな話し方してるとしたら
何て言うか……本当許しがたい。


結局おもいっきり
揺り動かされちゃって


「わかった」

『おし!じゃあすぐ来いよ』


携帯の向こう
安心したように
ユウキが軽く笑った気配の後
スタッフの彼を呼ぶ声が聞こえた。


『じゃあ後でなアキ。
……一生
忘れられねー夜にしてやるよ』


さっきまでと雰囲気の違う
ステージにいるときのような
強気の声がして
ぷつりと通話が切れた。


折り畳んだ携帯を
両掌の中にしまい込み
俯いて鼓動を落ち着かせるように
手の甲を胸に押し当てる。


何かもう、色々おかしい。


2回、3回....呼吸をして
最後に長く息を吐いてから
意識を振り払うように
黒いスニーカーの足
バックステージの方へ向けた。