狭いフロアに響き渡る
サクラの艶っぽい歌声。

普段の性格とは真逆の
コウのドラムとハルトのベースが
複雑にうねり、絡み合う。

それらをザクザクと切り付けるように
鋭いリフを奏でる私のギターの音。


首筋を流れる汗を振り切るように
激しくギターを掻き鳴らした。


FENDER JAPANのストラトキャスター。

楽器店の店長の薦めと
値段の手頃さ
柔らかな曲線を描く形状と
つやややかな色彩

色々吟味した結果
一年前に手にしたこのギター。


本当はマイクと同じ型を買いたかったけど

神憑り的な技術を持ち
それでいて感情に溢れた彼の多彩な音色に
いつも圧倒されてたから
明らかな実力の差を感じたくなくて
あえてそれを選ぶのをやめたんだ。


こんな始めから怖じけずいて
諦めた気持ちで始めたギター
どうして輝く音が出せるっていうのか。

ユウキにつまらない音って酷評されて
本当は歌いたかったからとか
そんなのは今は関係ない。


こんな状態のまま
終わらせたくない。


ケイが教えてくれて
今は生活の一部になった音楽
その情熱、伝えたい音、
他の誰にも劣らないくらい
きっと持っているから。

ずっと心を閉ざして見失ってた
昔と変わらない音楽を愛する気持ち
ちゃんと解放してあげなきゃ。


せめてここにいるみんなが
無駄な時間過ごしたって歎かないくらいの
今はまだほんの少しでもいいから
聴く人の感情に訴えかける
ギターの音色を……。


これがケイのメールの言葉を受けて
彼の音楽への深い愛情を知って
悲しみの感情に押し潰されながらも
私が出した答え――。


身体の芯を焦がしてた
熱い物の正体――。