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あのさぁ実はこの前
ちょっと面白い事があったから報告


一週間前から俺ら
夏のツアー始まっただろ？
ヘッドラインツアー第二弾

したら初日のNYのライブの日
ツアーバスのドアを叩く奴がいた訳


ドア開けたら立ってたのは一人のガキ
多分アキより少し上ぐらいの日本人の男


驚きつつも
とりあえず中に入れて話聞いたら
航空券だけの分しか金が貯められなくて
チケット代払えなくて困ってるんだと


まさかのまさか
俺らのライブ見るためだけに
日本からはるばる一人で来たらしい

クレイジーだろ


んでどうしたかって？
もちろんライブ入れてやったよ

そんで飯おごってやって
ツアーバス乗っけてやって
そいつが帰国するまでの三日間
一緒にライブハウスを点々とした

いつからここは
託児所になったんだ？


そいつが言うには
「テメエら日本で全然人気でねーし
待ってたらジジイになりそうだから
こっちから来てやったんだよ！」だとよ

要指導だろう？


結局そいつは最後まで
言おうとはしなかったけど
もしかしたら何か
逃げ出したい嫌な事あったのかも知れない


そんな時真っ先に頭に俺らの事浮かんで
ライブ見たいって思ったなら
それ以上に嬉しいことはないよな


始めはギラギラしてただけのあいつの目
ライブ中には全然違った表情
見せるようになって

そんなフロアをステージの上から
眺めながらふと
ああ、スゲー幸せだなって思った


きっと俺の歌はアイツの心の中に
いつまでも残ってんのかなとか考えたら
勝手にニヤケてくんの


何百万枚売れたとか
スゲー賞取ったりとか
そんな事は別にどーでもいいから

たった一人の人間でもいいから
そいつの中で
いつまでも生き続けられる曲

そんな歌を歌っていきたい


……ってもやっぱり
成功はしたいけどな
じゃないとアキ迎えに行けねーし


だから俺は
多くの人間に歌を届けることの出来る位置
――そこを目指したいと思う


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