そんな風に言われたら
もう頷くしか出来なくて
唇を噛み締めながら
何度も首を上下に振る。


ケイは満足そうに微笑んだ後
少し表情をきつくさせて


「これは俺の勝手なけじめだけど
来るべき時が来るまで
お前には連絡は取らない。

俺が歌を続けてるかぎり
お前との約束は忘れてないっつーか
手紙がわりみたいなものだから」

「わかった。
私からも約束は取らない」


私なんか泣いて
逃げることばっかり考えてたのに
ケイはその間真っすぐ前をみて
この状況に立ち向かう方法
逃げずに必死に考えてくれてた。

だから今の私に出来るのは
そんなケイの背中
笑顔で押してあげること。
信じて待ってること。


そう思ったから
無理矢理笑顔を作って
ケイを安心させようとしたのに

やっぱり離れるって事実は悲しくて
込み上げてくる鳴咽
我慢出来ないでいたら
ケイは困ったように眉を歪ませて笑う。


「アキ泣くなよ
これは別れじゃない。
大丈夫
絶対俺達また会えるから」

「うん……わかってる。
また会える」

「それでいつか
俺らの事馬鹿にしたそいつらに
“ざまーみろ!”って
中指立ててやろーぜ。

“約束”だからなアキ。
俺はお前を
絶対に一人になんかしないから。
その時まで信じて待ってろ!!」


しっかりと私が頷いたのを確認すると
ケイは叔父に向かって少し頭を下げて


「それじゃあアキの事
よろしくお願いします」

「ああ、わかってる。
……もう時間だ。
出してくれ」


それが合図となり
スモークのガラスが上りながら
車はゆっくりと走り出す。


ケイはすでに車の中見えないはずなのに
車と共に道を走り
完全に閉まったガラスごし
二人掌を合わせ続けた。


お互い見えなくなるまでケイは車を見送り
私はそんな彼を振り返って
愛しい彼の姿を鼓膜に刻みつけた。