訳がわからくて
真意を探ろうとケイを見ると

ケイは私の隣の人物の様子を
試すようにチラリと目を向けたから
すぐにピンときた。


そうか、さすがに彼らは
フランス語まではわからない。
今から話すのは
彼らに聞かれたくない話?

案の定叔父は難しい顔をして
不機嫌そうに足を組み替えてて
その姿にお互い顔が綻ぶ。

ケイは繋いだ手に
ギュッと力を込めると


「いいか、アキ
とりあえずは大人しくして
こいつらの所で
ぬくぬく優雅に生活すればいい。

使わせるだけ金使わして
色々と守られた世界で
身体と心の傷癒して
いつか来たるべき時が来るまで
こいつらの事利用しまくればいい」

「来るべき時?」


一語一句確かめるように
その言葉を繰り返す。


ケイは力強く頷いて


「そうだ。
アキ、俺は歌で上を目指す。
ネットん中なんて狭い場所抜け出して
世界中に俺の歌届けてやる。

この腕がぶっ壊れた時に
これまでこだわってた馬鹿みたいなもん
同じように砕け散ったっつーかさ
くだらねぇプライドなんかクソ食らえだ。

そう遠くない未来
あの時言ってたお前の夢
叶えてやるよ」

「ケイ……」


……いつかあんな広いステージで
ケイの歌が聞けるって事?


白い息と共に吐き出された彼の言葉に
全身に血が駆け回るみたいに
冷え切ってた心、ジンジンと熱くなる。


「――それでお前の事守ってくだけの力と
誰にも文句いわせないぐらいの
世間的な地位手に入れたら
必ずお前の事迎えに行くから」

「………!」


こんな話それこそ不可能だって
回りの人は言うのかもしれないけど

――でも彼の歌の力を
私は知ってるから。

だからわかる
いつかそれが現実になるって事。


ケイは私の涙、
細い指ですくうと


「アキ、今日明日とか
目先の幸せを願うんじゃなくて
もっと先を見るんだ。
5年先、10年先
長いスパンで一緒に過ごす未来。

このブレスに誓っても
俺絶対やってやるから
信じて待ってて欲しい」