「アキ、どんなに願ったって
ピンチの時にだけ
駆け付けてくれるような
んな都合のいい無敵のヒーローなんか
この世にはいないよ。

だから……辛いかもしんねーけど
現実を受け止めて
今の自分が出来る最良の方法を
選ぶしかない」

「どういう……事?」


その言葉は
私の願いを否定するものだったのに
彼の瞳は暗い色じゃなく
むしろ熱を持っていたから
胸がドキンと高鳴った。


ケイは変わらず私を真っすぐに見たまま


「もしこのままアキが望むように
俺が暴れてそいつらぶっ飛ばして
腕の一本や二本折れるの覚悟で突っ込めば
二割ぐらいの確率で
お前の事連れ出せるかもしれない。

で、そのまま遠くに逃げて
ひっそりと暮らすとか
そういう未来が待ってるのかも。

でもそんなのリスクが大きすぎる。
それに俺はお前に
そんなコソコソした生き方
してもらいなくない」

「そんなの……」

「――さっき
どっかのおっさんに言われたように
今の俺にはお前を養ってく力も資格も
何にもない。

現に仕事もしてなけりゃ
お前を住まわせる家一つ
自分の力で用意することも出来ない」


どうしてそんな風に
いきなり常識説いて
回りの大人が言ってたような事
ケイが言うんだろう。


全部面倒になって
私の事やっぱりいらなくなった?


頭の中真っ暗になって
焦点の合わない目で
沈黙を作り続けていたら

ケイはニヤリといつもの笑みを見せ
何故かフランス語で話し始める。


「――だから
このクソみたいな状況を
逆に利用してやるんだよ」

「……え?」