「ケイ!ケイ!!」


きっといつもみたいに
ケイとかマイクとかやってきて
私の事助けてくれる。

このどうしようもない暗闇から
私の事救い上げてくれる。


お願いだから……助けてよ。


祈って、祈って
泣き叫んで、暴れて
今自分が思い付く事全部やったのに

私の願いは誰にも受け止められず
病院の裏口に止めてあった黒塗りの車
その後部座席にほうり込まれた。


当然内側から鍵は開かなくて
でも諦めずに何度ももがいて
分厚いガラス、力の限り叩いたけど
ただ腕が痺れて痛くなるだけだった。


隣に乗り込んだ彼は
そんな私の行動に眉を潜めて
他人事みたいにため息をつくと


「彼なら今頃
うちの人間に君が帰国する話を聞いて
きっと荷物が軽くなったって安堵してる。

どうせ二、三年一緒に暮らしただけの
名ばかりの兄妹だろう。
無理する必要もない。

この後の細々した処理は
全て弁護士に任せてある。
――もう出してくれ」


前に乗り込んだ
ガードマンみたいな二人にそう言うと
ゆっくりと進み出した車。


動き出した振動が
ビリビリと身体に直に伝わる。


……嘘
本当にこれで終わり?

ケイの姿を見る事も
話も出来ずにこのまま
彼と離れ離れになるの?


スモークの張った窓
しつこくガンガンと鳴らしながら
絶望で涙が溢れてきた。


自分の事なのに。
自分自身の事なのに……
こんなにも無力でちっぽけな子供で
何一つ出来ない――。


回りの景色も徐々にスピードを早めて動き
もう駄目だと手の力抜け始めたら


バンッ!

と私のいる右側のガラスが
外側から叩かれた音。

不鮮明なガラスの向こうに現れた人物
その姿が見えて


「止めて!!」