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そのままマイクに抱き上げられ
真っ白い煙が充満する屋敷を脱出。


雪がちらつき
凍てつくような寒さが広がる白銀の世界。

分厚い雪が一面を被う庭で
マイクの肩ごしに振り返ると
私たちの部屋の反対に位置する
東側のある一角から
一際激しく燃え盛る炎が見えた。


――そうあそこは間違いなく
ジェフと母の寝室。


それがどんな事を意味するのか理解するには
今の私には心に余裕がなさすぎた。


螺旋状に渦巻き
高く高く舞い上がる炎。

夜の色よりも更に黒い煙が
辺りを覆い尽くすかのように立ち昇る。


ガラスは破れ
真っ赤になってやがて朽ちていく石の壁。

全てを襲う紅蓮の嵐。

やがて遠くから聞こえてくる
サイレンの音――。


その音をも吸い込んでいくような
静寂に包まれた雪の中
ケイや皆と過ごした思い出だらけの家が

炎に包まれ
焼き尽くされていくのを
マイクにしがみつきながら
私はただジッと眺め続けていた――。