ケイは低く強い声で


「いいかアキ“こう”なるんだ。
はっきり言うけど
多分俺は前みたいに
ベースは弾けなくなると思う。

……そんな風に責任感じるなよ。
別にあんなの嫌々やってたし
俺には歌があるから
何も気にしなくていいんだ。

でもお前は違う。
まだ何もかも始めたばかりで
色んな可能性無限に抱えてる。

だから頼む
俺の言う事聞いてくれよ」


そんな辛そうな顔しないで欲しい。
逆らう気力無くなって
全て従ってしまいたくなる。


それにケイがベース
弾けなくなるなんて
そんなのって……。


色んな感情渦巻いてたけど
頭の中ぐちゃぐちゃだったけど
未だ砕けない確固たる信念――。


私にだって守りたいものがある。
彼と同じように
他の何を犠牲にしても
守りぬきたいものあるから……。


だから私を見下ろすケイの灰色の瞳
真っすぐに見つめて
揺るぎない言葉彼にぶつける。


「私の歌がどれほどの物かなんて
私にはさっぱりわからないけど
ケイの言葉が本当なら

“私にも歌がある”
それで十分だって思うから
私は他の何もいらない。

それにこのままだと
二人とも無駄死にするだけだよ!
あの人の望み全部叶えることになる。
そんなの私は嫌だ!
あの人にはもう負けたくない!」

「アキ……」


お願いケイ。
お願いだから私の願い叶えて欲しい。


祈るような気持ちで
彼の瞳見続ける。