そうしてケイから身体を離し
床に置いた手の甲目掛けて
思いっきり足振り落とそうとしたら


「よせ!」


ガシッ!

とすんでのところで阻むケイの腕。


「どうして止めるの!
ケイだってさっき同じ事したでしょ?
私を守るためにその腕犠牲にしてくれた!

ケイを救えるなら
この手がどうなったって構わないの!」

「駄目だ!
俺はお前の将来を潰したくない」

「将来?将来って何?
それならケイの将来だって!」


泣き叫ぶように言った私の声に
「違う!」とケイの怒鳴り声が重なる。


「違うよアキ。
俺とお前じゃその価値は違う。

まだ直接は言ってなかったけど
お前の歌は凄い。
確かに技術はまだまだだけど
そんなの関係なくて質の問題だ!
お前の声はきっと俺を越える
その力を持ってる」

「嘘……」

「こんな緊迫した時に
嘘なんか思い付く余裕ねーよ。
プレッシャー感じたら
アレかと思って言わなかったけど
最初に聞いた時からずっとそう思ってた。

だからこれからギターとかベースとか
色んな楽器と出会って
音楽の幅とか才能を広げてくお前の種
こんなとこで潰したくないんだよ!」


私の歌がケイを?
そんな事あるはずない。

それにいきなりそんな事言われても
ハイそうですかなんて引き下がれる訳無い。


白い煙が天井中を覆い尽くし
喉が焼けるように痛んで
数回咳を繰り返す。


「見ろよ、アキ」


すると何を思ったのか
ケイは右手の甲ズイッと
私の目の前に突き出してきた。


粉々に砕けたらしい骨が
所々有り得ない風に盛り上がり、
紫色の肌突き破って
真っ赤な肉と血液外部にさらけ出してる。


あまりの痛々しさに
顔を背けたくなったけど
ここで逃げたら負けだと思って
ギュッと拳に力を込める。