そう思ったらもう耐え切れなくなって
ケイの足に勢いよくしがみついた。


「ケイ!本当にもう止めて。
早く逃げて!お願いだから」

「アキ、離せ」

「嫌だ、絶対に離さない。
自分の母親が起こした後始末は
自分でつける。
ケイは私が死なせない
この命に変えても!」

「違う、アイツは
お前の母親でも何でもない。

それに“俺が”
お前を死なせたくないんだ。
何を犠牲にしても。
だから離せ」


そう強く言って左手だけで
私を引き離そうとしたけど
全身全霊で彼の足に巻き付いてる私の事
なかなか思い通りにならなくて


「アキ、いい加減にしろ!
もう時間がないんだ!
お願いだから大人しくしてろよ!」

「……ッ!」


遠慮のない彼の怒鳴り声に
恐怖でビクリと身体が震えたけど
――コレだけは引けない。


その間にも焼けた臭いどんどん強くなって
少し開いたドアの隙間から
白い煙が流れ込んでくる。


本当にもう時間がないって
私にもわかる。

でも――


「嫌だ離さない!」

「アキ!!」


今まで向けられたことのない怒りの感情に
くじけそうになるけど
我慢して強く口元を噛み締める。


どうしたらいい?
どうしたら彼を説得できる?


諸悪の根元の手錠
憎々しくもジッと凝視して。


「それじゃあお願い、
私の手もケイと同じようにして?
そうしたら腕離す」

「お前何言って……
駄目だ」

「どうして!?
ケイだけ傷付くなんて
私には堪えられない。
……じゃあいい。
それなら自分でやるから」