「あー駄目だなコレ。
完璧ぶっ壊れてる。
……それじゃあ内線電話って
クソッ、アイツ電話線切ってるし。

……こうなったら
1番原始的なやり方だな」


軽く舌打ちして二つの電話放り投げると
私の手首の手錠と繋がった
ベッドヘッドのパイプ
ブーツの踵で蹴り始めた。


ガンッガンッと大きな金属音が響き
その度に手錠を通して
激しい振動が手首に伝わる。


更に宙を舞う鮮血
手と肩の痛みの為に小刻みに震える右腕
大量に流れる首筋の汗。

そんなケイの姿
もうこれ以上は見ていられなくて――


「もういいよ!
いいから、これ以上動かないで!
そんなにいっぱい血が出て
死んじゃったらどうするの?

大丈夫だよ、
お母さんはきっともう来ない。
私が死のうが生きようが
何の興味もなくなってる!
だから、先に逃げて
お願いだから!」


ガンッ!ガンッ!


「クッソ……!」


縋るような私の願い
まるで聞こえてないみたいに
全く動きを止めようとしない。


「ケイ!」


私の頬にまで飛び散った血のシブキが
絶えず流れてくる涙と混ざり合い
ポタポタと床に落下する。


「ケイってば!」


やがてケイは一瞬だけ足を止めると
何か探るような顔付きをして
いらついたようにドアの方を睨み付けた。


「……どうしたの?」

「アキ悪いけど
そんなに悠長な事言ってられなくなった。
あの女屋敷に火付けやがった」

「えっ!」


その言葉に意識を集中させ
辺りの様子に感覚を研ぎ澄ませると
微かにだけど感じる
何かが焦げるような臭い。


……何て事!


あの人はいったいどこまで堕ちれば
気が済むのんだろう。


……許せない。

こんなに人を
憎いと思ったことない。