その甲高い悲鳴に反応して目を開けると
ケイの腕の中に包まれた自分と
顔を歪ませて床に横たわる
母の姿を認識する。


床に落下した銀のナイフ。

鼻先に広がるのは血の臭い。


ハッとしてケイの右腕に意識をうつすと
彼の右手の親指
ありえない風に曲がってて
赤黒くなった甲の皮膚は裂け
骨らしき物も見える。


それに……
私を庇ったせいで受けたナイフの刃が
肩から肘にかけて深い傷を付け

そこからおびただしい量の血液が
床にボタボタ流れ落ちてる。


そのあまりの映像に息が一瞬止まり
体中に沸き立つ寒気。


どうしよう……私のせいだ。


「ケイッ!」


途端に真っ青になって
ガクガクと全身を震わせた私を

ケイは左胸に抱えるようにして抱きしめ
憎悪を持った鋭い眼差しで
母の姿を睨み付けた。


その瞳はあまりに冷酷で
私でさえ恐怖で竦み上がる程……。


母は一瞬身じろぎ、
でもケイに蹴られたらしい
腹部を両腕で押さえながら
フラリと立ち上がた。


長い黒髪は激しく乱れ
血走りながらも虚ろな目つき。


「なっなによ、その目!
貴方まで私を馬鹿にするの?
お、親子揃って私の邪魔ばかりして!」

「……親子?」


少しだけ眼光を弱めたケイに対し
興奮しきったように肩を揺らし
短く荒い呼吸繰り返す母。


その間もケイの腕の傷からは
大量の血液が流れ出てて。

ダラダラと私の手に
温かな感覚が広がっていく。