部屋の中も外も
物音一つ聞こえないほどの静寂。

ケイは手首をガシャガシャ引っ張り


「どうなってるんだ?これ。
チクショウ!
びくともしねーし」

「わからない
確か夕食の後、ケイとスタジオにいたら
なんか凄く眠くなって
それから記憶ない」

「ああ!そうだ、
それで二人してフラフラんなりながら
ここまで歩いて来て

……って俺もそれから何にも覚えてねぇ。
何で床に寝てんだよ俺」

「ケイ、泥棒とかかな?
もしかして」


こんな手錠なんか
いったいどうなってるんだろう。
頭が混乱してくる。


「わっかんねえけど
とりあえずヤバイ状況だってのは確かだ。
俺携帯どこやったっけ」


そうして空いた手で
ズボンのポケットを探ってたけど
携帯はどこにも見つからず
私は辺りに視線を回す。


「あっケイあった!
ほらあそこ」

「本当だ、ナイスアキ。
とりあえず警察とマイクに電話」


そう言って彼は
ベッドから少し離れた所に転がってた携帯
足を伸ばして取ろうとしたら

一足早いタイミングで現れた
黒いヒールの爪先が携帯を蹴飛ばした。


遥か離れた壁にぶつかったその音は
いったん安堵に包まれた私の心を
瞬時にぶち壊す。


そして音もなく現れたその人物に
あまりに驚いて息を飲んだ。


な、何で?


驚愕の後、漏れた声。


「お母さん……」