――今さら彼女に何を期待するの?

内心はそう思っているのにどうしてか
凄く馬鹿げた事願ってしまう。

生まれた時からの人間の本能なのか
私を見て、抱きしめて欲しいと。


だってもうすぐクリスマスだ。

もしもサンタが本当にいるならば
こんな小さな私の願い
叶えてくれてもいいじゃない?


ケイはしばらく何か
考え込んでたみたいだけど
そのうち諦めた顔で


「ま、しかたねーから
協力してやるよ。
正直言ってあの女はいけ好かないけど
お前がどうしてもって言うならな」

「本当?
ありがとケイ、大好き!」

「ったく、お前は
どうしようもないお人よしだよ。
んで、曲はどうする?」

「えーっと、ケイが作ってよ
クリスマスっぽいロックな曲!」

「えー何だよそれ!」


そうして二人ギャーギャー言い合いながら
曲作りをしていたら


「何だか凄く盛り上がってるね?
よかったら僕も
仲間に入れてくれないかい?」


……え?

声をした方振り返ると
スタジオの入口に立つ
先月の公演ぶりに会うジェフの姿。


「ジェフ!驚いた!
いつ帰ったの?」

「ただいまアキ、たった今着いたとこだ。
久しぶりだね
君はまた一段と綺麗になった」


そう言ってジェフは
駆け寄った私を抱き上げて
恒例の頬にキス。

相変わらず彼の姿は
ギリシャ彫刻みたいに綺麗だったけど
少し痩せたみたいだし
大分疲れているようにも見える。


「ジェフ、大丈夫?
早く休んだ方がよくない?
……それと、お母さんは?」

「あぁ、彼女は時差ボケが抜けなくて
もうベッドに横になってる。

それはそうと
二人で何をそんなに
盛り上がっていたんだい?
ほら、ケイ睨まないで
詳しく教えてくれたら
邪魔者は退散するから」


いたずらっぽい笑顔を見せながら
そう話すジェフに
さっきの計画を打ち明けたら
キラキラした瞳更に輝かせて
彼は興奮したようにまくし立てた。