――それから二人何となく黙って
巨大なスクリーンの映像を眺める。


そこに映し出されていたのは
90年代のロックシーンを担った
アメリカ人バンドのラストライブ映像。

10万人の観客で埋めつくされた
野外会場のステージの上で
熱いパフォーマンスを見せるボーカリスト。


その姿を眺めながら


「ケイ、私の夢
教えてあげようか?」

「……何だよいきなり」


ケイが驚いた様子で
こっちを振り向いたけど
私はスクリーンを見つめたまま
言葉を続ける。


「私の夢は
ケイがこんな風な大観衆の前で歌うのを
最後尾で眺めること」

「………」

「それで、隣にいるケイのファンの子に
“あれ私のお兄さんなんだ
凄いでしょ?”
って自慢するの。
――それが私の夢」

「アキ……」


さっきマイクに
あんな話を聞いたばかりなのに
こんな話を彼にするなんて
血も涙もない酷い妹?


でも仕方ないよ、
本当の事だもん。


――いつか絶対この夢叶うって
そう信じてる。


ケイはため息だか笑い声だか
よくわからない声を上げた後


「ほんっとお前はさ
俺を何回打ちのめせば気が済むわけ?」

「えぇ!知らないよそんなの」

「まったくさ、
あー本当まいるよ。
……それじゃあさ、
俺の夢も教えてやろうか」

「ケイの夢!?
教えて、凄い知りたい!」