「……ケイ」

「何?」

「右手出して!」

「なんでだよ?」

「いいから!ほら早く」


怪しがるケイを急かすように
彼の右腕を引っ張ると

ここに来る前に自分の部屋から取って来た
プレゼントの革のブレス
ケイの手首に付けてあげた。


「ハイ、クリスマスプレゼント」

「ちょっと気が早くねぇ?」

「いいの!
だって待ち切れなかったんだもん」

「それ普通貰う方だろ」

「ちょっと!
文句ばっかり言ってるなら返してよ!」


頬を膨らませて腕を掴もうとする私を
ケイはスルリと避け

スクリーンの光を利用するように
手首を上にかざし
革のブレスをじっくり眺めて
満足そうに微笑んだ。


「嘘だよ。
アリガトウアキ。
すげえ気に入った」

「ううん、それならよかった。
凄く似合ってる」

「……Noiseか」

「そう、確実にNoiseでしょう」

「ああ、間違いなくNoiseだ」


二人してそう言い合って
堪え切れずに笑う。


第三者にしたら
訳のわからないだろう会話。

シルバーのプレートに刻んだ言葉の意味
説明しなくてもわかってくれたのが
泣きたくなるくらい嬉しかった。


“Forever in Noise”


普通音楽という意味を持たせたいなら
“Music”とか“Sounds”とか
表記するべきなんだろうけど

ケイの歌は、彼が表現したいのは
そんな生易しい世界じゃないから。


だから“Noise”...
この言葉を選んだ。