ケイに殴られ
床に激しく倒れ込まされたヴィンスを
なおも彼は追い詰めて
馬乗りになって殴り掛かる。


ヴィンスももちろん反撃して
拳と肌がぶつかる音が部屋中に響き渡り
何とかしないとと


「……二人とも
止めてよ!!」


そんな私の悲痛な叫びも
二人には全く届いた様子もなく

相手の身体を吹っ飛ばさせて
更に激しく床を転がって
色んな家具薙ぎ倒し
当たり一面グチャグチャに散乱していく。


どうしよう。
このままじゃ……


互角かと思ったその戦いは
前に話を聞いていた通り
段々とケイが力でヴィンスを圧倒し始め

一方的に殴られまくるヴィンスの顔
徐々に血の赤で染まっていく。


……何でケイ
そこまでっ……?


ゾクゾクと鳥肌が
背中に立つのを感じながら


「ケイ!もうお願いだからやめて!
このままじゃヴィンスが!」


完全に正気を無くしたケイの瞳は
何の景色も写さず
私の声も全く届いてない。


……どうしよう
私じゃケイを止められない。


そう唇を噛み締めて絶望に襲われた時
ある一人の人物の顔思い浮かんで
急いで立ち上がって
部屋の外に飛び出した。


――空からは大粒の雪降り続いてたけど
そんなの全く気付かずに
縺れる足しっかり踏み締めながら
雪の中を走り抜け隣の家に駆け込んだ。


靴に付いた雪廊下に撒き散らしながら
二階の西奥の茶色い扉
勢いよく開けて叫ぶ。


「マイク!」