そんな昔の傷
少し癒してくれた彼の優しい言葉に
涙が止まらないままの私を
ヴィンスはそっと抱きしめた。


そして彼の胸に顔を埋めた私の
背中に回った腕の力
少し強くなったかと思ったら


「……ダメだな。
ちょっと俺駄目だ。
……アキ、このまま俺の話
聞いてくれる?」

「え?
……う、うん」

「本当はまだ
言わないつもりだったんだけど
なんかもう我慢できなくなっちゃってさ

アキ、俺は君が好きだ」


……え?
何?

す、好きってどういう……。


ケイがいつも私に言うみたいな
妹としてって意味?


訳がわからなくて全身が硬直した
私の心の中見透かしたみたいに
ヴィンスは頭の上でクスリと笑うと


「アキ、俺の好きは君を異性として
女の子として好きだって事。

アキの全てが可愛くて仕方ないし
守ってあげたいって思う」

「………」


驚きすぎて何も言葉に出来ない。

だってこんな事
想像もしてなかったから。


「ごめんねこんな風に驚かせて。
アキは俺の事
沢山いるアニキの中の一人ぐらいにしか
思ってないってわかってるけどさ。

だからこれから先
俺の事少しづつでいいから
異性として男として見てほしいんだ。

一年でも二年でも
五年でも十年でも君が大人になるの
俺はずっと待ってるから」


柔らかい雪のヒトヒラが
スッと肌に溶けるような。


そんな彼の声と言葉に
頭が爆発するぐらいドキドキして
恥ずかしくて
何も返事も出来ずに
真っ赤な顔
彼のシャツに隠すように埋めてたら

背中から聞こえてきたある声。


よく知ってるはずなのに
今まで聞いた事のない
冷たく、突き刺さるような
それでいて感情を表さない――声。


「何、やってんの?」