「マイク?」

『……何?』

「ケイは――死んだの、ね?」

『ああ そうだ』


唇の端がピクリと震え
絶望で視界が闇に覆われる。

喉から勝手にもれた嗚咽。

――でもまだ駄目。
まだ確かめたい事が――


「でも……自殺は してない」

『ああ、死因は自殺じゃない』


安堵でも絶望でもない
ぐちゃぐちゃな気持ちの中
何かを堪えるように喉の奥から
重い息を吐き出す。


わざと感情を込めないマイクの声が
彼の逆の心理を表してるみたいで
余計に息苦しさを誘う。


――我慢して
まだ聞くべき事があるから……。


そうして生暖かい夜の空気
助けを求めるみたいに吸い込んでから


「……ケイは
約束を……ちゃんと覚えてた?」

「ああ、あの日から死ぬ直前まで
一秒だって忘れたことなんかなかったよ」


……ッ!


さっきとは違う優しげな
マイクの声聞いたらもう駄目で

何もかも耐え切れなくなって
押し殺そうとした感情が
嵐みたいに込み上げてくる。


肩を震わせながら口元に手の甲を当てて
枯れることのない涙
どんどん零れ落ちて。


他にも沢山聞かなきゃいけない事あるのに
もう一言も話せなくなって
泣き続ける私に

マイクは何も言わず
無言で私のしゃくり上げる声
聞いているだけだった。


――するといきなり背後から
スッと携帯が手から抜かれたと同時に
夜の闇に同化するような
静かで艶やかな声色。


「マイク?
ああ俺。
……うん、そう…みたいだ」


視線を後方に向けると
予想通りの人物がそこにて

私が掴んだ紙に
ちらりと視線を送りながら
携帯に向かって会話する
彼の英語を聴く。


「ああ、俺が全部話す。
……そう、あれも……。
お前は?……そっかわかった。
……じゃあまた電話する」