「………」


言葉を用意してなくて
それに呼吸もままならない状態で
何も声を出す事が出来ない。


そうしたら電話の向こうから


『アキ、遅いよ』


ってその声を聞いた途端
堰を切ったように涙が零れ落ちた。


今カナダは早朝なのに
何でそんなに早く電話にでるの?とか

私の携帯番号知らないし
一言も話してないのに
何で私ってわかったの?とか

色んな疑問が頭に浮かんだけど
それでもまだ
一言も言葉を発することが出来ない。


「………ッ」

『いつまでアイツが言った事
律義に守ってるつもりだ?

“約束が果たされる日まで
お互い連絡は取り合わない”なんて。
いい加減待ちくたびれた』


実際には存在する
彼と私の間の遥かな距離を
微塵にも感じさせないほど
クリアに届けられる彼の声の響きに
更に涙が溢れた。


「……マイクッ」

『………あぁ』


懐かしいその低い声に
色んな感情蘇ってきたけど

気持ちを少し落ち着かせて
ぽつりぽつりと呟きながら
胸の内を明かし始める。


「……確かにそれもあるけど
それだけが……理由じゃない、」

『………』

「……だってマイクの言葉が
最終結果だから……
……ケイの事に関しては
マイクの言葉が絶対で……
間違いなんかはありえなくて

……マイクが“そうだ”って言えば
事実として受け止めるしかない。

もしかして?とか……
期待とか疑ったりとか
もがく事出来なくなるから
それが怖くて……聞けなかった」

『……そうだな』


そう、彼は真実を何もかも知ってる。


その言葉を聞いてやっと決心する。


――色々な事を
確かめなきゃいけない。


何を聞かれるのか
すでに全部気付いてるマイクは
私が準備できるの
無言で待っていてくれてる。


数回深い呼吸をして
やっと……口を開いた。