『K』と書かれた文字の下には
英文内で語られてた通り
ギタータブ譜が記されてて

その最後まできっちりと目で追った後は
まるで使命を果たしたかのように
全身の力が抜けて
崩れ落ちるように
その場にしゃがみ込んだ。


固まって動かない指
意識して一本一本力を入れて
紙の束を掴み胸に抱き寄せた。


そんなはずはないのに
微かにケイの温もりと匂いを
感じたような気持ちになって
瞼をゆっくり下におろす。


――あぁ、そうなんだ。


間違いなくこれは
今は亡きケイからのメール。


今よりほんの少し前の
まだ肉体が存在していた頃の
彼からの言葉。


書かれてる内容に
覚えがあるのは勿論だけど

英文の微妙な言葉の言い回しからも
……どうしようもないくらい
そうだって……わかるから……

手書きでもなんでもない
無機質な印刷物なのに
彼から紡がれた言葉が
写し出されているだけで

温度も柔らかさもないそのただの紙が
愛しくて愛しくて……
触れている部分が熱く
裂けるように痛んだ。


――どれぐらいそうしてたか
解らないけど

おもむろに瞼を開けて
冷たく固いコンクリートの上に
しゃがみ込んだまま
さっきポケットに突っ込んだ
携帯を取り出した。


初めてに近いぐらい押し慣れない番号を
ゆっくり、ゆっくりと

記憶を探り
確認しながら押すと
それを耳に当てる。


――コールはわずか二回。
すぐに相手は出た。