恐る恐るそう尋ねると
不安げな私の気持ちを
打ち消してくれるユウキの明るい声。


『ああ、奴の事なら心配するだけムダムダ。
アイツが怪我してるとか
スタッフ誰も気付かなくて
ケンが逆にふて腐れてたくらいだし。

“包帯巻いてんのに
誰も俺に注目してくれねぇ”って
バカだろ?』

「アハハ、そっか
なら安心した」

『それじゃあ
もうすぐしたら帰るから
戸締まりしっかりしとけよ』

「うん、わかった」


通話の終えた携帯をにぎりしめ
何となく余韻で一息ついてから

助手席に座り込んでた身体後ろに向けて
車内の電気を消そうとしたら
後部の座席の上にあったものに
目を奪われた。


何……これ?


ゆっくりと手を伸ばし
それを掴んでライトの下に照らす。


薄暗い車の中
オレンジがかったライトを浴びて光るのは
回りが少しだけ茶色がかった
丸い形の白色の花びら一枚。

この花には見覚えがあって
ドキンと心臓が高鳴った。


……そう、これは間違いなく
あの……海で死のうと思った日
私の回りを取り囲んだ
大量の白い花束の花びら。


沖に向かって進もうとした私の足を止め
海岸へと意識を移す
原因となったもの――。


何でこれがここに?

あの花を海に流したのは
もしかしてユウキ?

――ならどうしてあんな事……。