「もし……もし」

『アキ?俺』


……えっ!何で?


「ユウキ?……どうして?
携帯の番号教えたっけ」

『いや、昨日お前
リビングに携帯置きっぱなしにしてたから
勝手に赤外線しといた』

「何それ」

『別にいーじゃん。
俺としてはお前が聞いてくるの
期待して待ってたんだけど
お前全然そんな気配ねーし』


拗ねたように話す
彼の姿を想像すると可笑しくなって
クスクスと笑みが零れる。


『何だよ、笑ってんな。
ってかさお前今家?』

「うん、そうだけど」

『マジで!?助かった〜!
あのさ頼みがあるんだけど
玄関の棚の上に
車の鍵が置いてあるからさ
それ持って車のとこ今行ける?』

「平気だけど
今日って車使わなかったんだ」

『ああ、朝早かったから
事務所が車で迎えに来てくれた。

で、さっきの話の続きだけど
車の助手席の前のとこに
名刺が置いてあると思うんだけど
そこに書いてある番号
いますぐ調べて教えてくれないか?』

「わかった、今家出る」

『悪いな』


彼が言った通り
玄関の棚に置いてあった鍵を掴んで
急いで外に出た。


そうしてマンションの建物の
すぐ前に面した駐車場に向かい

彼の車の中で
頼まれた名刺の電話番号を伝え終えると


『本当助かった。
わざわざありがとな』

「ううん、別に……
あっあのさ、」

『何?』

「今日の撮影どうだった?
ケン……大丈夫だった?」