PM8:36


ガチャリとドアを開けると
予想通り無人の真っ暗闇の部屋。


サンダルを脱ぎ
パチンと電気をつけたとたん
一面に降り注ぐ暖かな白い光に
ホッと息をついた。


ユウキまだ帰って来てないんだ。


それがわかった途端
荷物をその場に置いて
何かに取り付かれたように寝室に向かった。


寝室のライトは淡いオレンジ色の光。

その光に照らされたダブルベッド
ガラス製のチェスト
大きいスピーカーのコンポ
CDラック。

ギターやアンプ等の機材
スコアが無造作に積み重ねられた棚
Macのパソコン
備え付けのウォークインクローゼット。


漁るっていっても
いったい何処を見ればいいんだろう。


――普通なら
まず怪しいのはパソコン?


でも自慢じゃないけど
私はこの手の機械が大の苦手で
カナダにいた時のパソコンの授業でも
普通に扱ってるつもりなのに
理由もなく画面が固まったりして。

適当にいじくろうものなら
多分元の状態には戻らなくなる恐れがある。


なので手始めに
チェストの引き出しをあける。


中にはシルバーのリングや
革製のブレス等のアクセサリーが
ぐちゃぐちゃと放り込まれ

その下の引き出しにはパスポートとか
通帳に印鑑――
後は訳のわからない書類。

……っていうかこんな貴重なもの
こんな解りやすい場所に
しまっておかないでほしい。


これ以上ここには何もなさそうで
次はクローゼットの扉を開けた。


パイブに掛けられた
ジャケット等の服のサイドには
小さめの棚が取り付けられてて

そこにはぐちゃぐちゃに置かれた
音楽雑誌とか
服関係の小物
床には何故かスケートボード。


本当は写真とか手紙とか
そういうのを探したりしてたのに
やっぱり一年半しか
ここに住んでいないだけあって
あるのは必要最低限のものばかりで

ケンが言ったような
面白いものなんて
いっこうに出てこなかった。