視線を移すとその手には
私とケイが写った写真が握られてて。


「どうしてそれっ
鞄にいれてたはずなのに!
ちょっと返してよ」


叫びながら慌てて伸ばした手を
彼は立ち上がって軽々とかわす。


「よくわかんねーけど
さっきからここに落ちてた。
多分携帯取り出した時に
一緒に出たんじゃねーの?

なあ、コイツ
誰かって聞いてんだよ?」

「いいから早く返してよ。
あんたには関係ない!
……痛ッ!!」


怪我の事も忘れ
勢いよく立ち上がった左足に
強烈な痛みが走り
崩れるようにその場にしゃがみ込む。


そんな私を見て
何か悪巧みを思い付いた顔をして
ニヤリと不適な笑み。


「……へぇ
そんなにこの写真大事なんだ。
死のうとしてたくせに矛盾してねぇ?

――ならいい事思い付いた。
お前今日からここに住めよ。
そうだな、……期限は
例のライブとやらが終わるまで。

それが済めば写真もちゃんと返すし
自殺したけりゃすればいい。
どうだよ?」


……何、言ってんの?

今日初めて出会った人間に
一緒に住めとか訳判らない。


――でもあれは
私が持ってるケイとの唯一の写真で
簡単に諦めたりとか理屈じゃなく出来ない。


「何でいきなりそんな事。
目的は何?」

「目的?
そんなたいそうなもんねーよ。
俺はお前みたいな奴が大嫌いだから
ただのイヤガラセ」


そう口の端を歪ませて笑う顔を見て
再び心臓がはげしく鼓動を打つ。


……まただ。

この人やっぱりケイにどこか似てる。

顔も声もまるで違うのに
何で彼の姿にケイを思い出させるの?


夢遊病患者みたいに呆然として
床にへたり込む私を見て
さっきの返事の肯定と取ったのか。


「って事でヨロシクな。
俺の名前は……ユウ。
お前は?」


私の目の前に同じようにしゃがみ込んで
歌うような清らかな低い声でそう囁くから。

導かれるように
ゆっくりと口を開いた。


「――アキ」