「……マジかよ」


昨日の病院での事まで
全て彼に伝え終えると
ハルトは愕然とした表情で
独り言のようにそう呟いた。


目の前のグラスの中は
氷がすっかり溶けて
2層の奇妙なドリンクに成り果ててる。


「あいつらがそこまでするって何でだよ。
お前ユウキと会ったのって
本当に海でが初めて?」

「うん、
歌はサクラの勧めで
多分、6月ぐらいに聴いてたけど
ライブも行った事ないし
顔だって知らなかった」

「でもケンって奴の話を聞いた限りじゃ
ユウキが東京からこっちに戻って来たのは
お前の為だって考えるのが普通だろ。
……ユウキが越して来たのは
いつ頃か知ってる?」

「確か……あの家に住み始めたのは
一年半ぐらい前って言ってた」

「とすると……俺らが中2の春ぐらいか。
アキがうちの学校に転校して来たのって
確か中1の2月だったよな?

凄い変な時期だったから覚えてるけど
近いっていえば近いな。
もしかして此処に越してくる前
お前東京に住んでたとか?」

「ち、違う」

「そっか……
じゃあなんでアイツは
お前の事知ってたんだろう。

………っていうかさ
お前の転校理由って何?

だってお前んとこの病院
かなり古くからあそこにあったよな。
もしかして家の方針で海外留学とか?」


「まさかな……」なんて冗談っぽく言う
ハルトの何気ない言葉に
ピクリと身体が反応を示す。


――確かにあの家には
本当はいとこだけど
戸籍的には私の妹と弟にあたる子供がいて

弟の方は現にあの家の方針で
今アメリカに留学中だから
適当に話を会わせることも出来ただろうけど
やっぱりそれはしたくなくて

ケイの事とカナダに住んでた事
正直に打ち明けようと心に決める。


この事を誰かに打ち明けるのは初めてで
勝手に顔がこわばって
掌に嫌な汗も滲んでくる。


「あ、あのね……
実は……」

「やっぱいいや話さなくて」

「……え?」