「そういう“約束”があるのに
お前は全部投げ出して
自殺しようとしてたとか
つくづく自分勝手な野郎だな?」


彼の口から出た『約束』という言葉に
思わず身体が震えた。

でも負け惜しみみたいに。


「あんたには関係ない」

「確かに俺には関係ねーよ。
でもさっきの友達とやらには
関係大ありだろ。
ライブまで日も浅いのに
ギターの奴が急にいなくなったら
代役をたてるにも時間がたりない。
――結果ライブは中止。

音楽なんて確証のない物
やってるもんにとっちゃ
いつどこで何が
転がり込んでくるかもわかんねぇのに。
そんな奴のチャンスの芽を
お前は勝手に潰そうとしたんだ。
まさか人の夢まで奪う権利
お前にはないだろうよ」

「………」


正論過ぎて何も言えない。

コイツの言う通り
さっきの電話の相手のサクラが
このライブにどんなに力を入れてるか
十分知ってたから。


「――自殺なんてのは
残された者の気持ちなんて
これっぽっちも考えてねえ
最低最悪の裏切り行為だ」


――裏切り?

それじゃあケイは私を裏切ったの?


……ううん。
それだけは絶対に違う。
ケイはそんなことしない。


そう思ってソファに座ったまま
彼を睨み付けた私を一瞥すると
彼は床に落ちてた一枚の紙を
ヒラリと摘み上げた。


「そういやぁ、これ誰?
今と髪色違うけど
こっちの金髪はお前だろ。
この隣の外人の男、お前の彼氏?」