強く、強く抱きしめられ
触れ合った身体から
振動のように声が伝わる。


「よかった
アキ、どこもなんともないか?」

「ウン、さっき電話で言った通り
ケンが助けてくれたから。
……あっと
他のメンバーの人達は?」

「アイツらなら心配いらない。
アキは見つかったって
ちゃんと伝えたから、皆家戻ったし」

「そっか、
なら良かった」


安心して力が抜けたけど
まだ微かに身体が震えてて

そうしたらユウキが
今まで聞いた事ないぐらい
凄く優しい声で私に呼びかけた。


「アキ、ケンは大丈夫だ」

「え?」


どうして私の考えてる事
わかったんだろう。


「アイツは絶対大丈夫。
ベース弾けなくなるとか
そんなシリアスな人生たどる
星の下では生まれてきてねーし。

アイツは根っからのお笑い野郎だから
そんな心配すんなよ」

「何その慰め方」

「ハハッ、そーか?
結構いい事言ったと思うんだけど。
この案かなり自信あるよ俺。
賭けてもいい」


自信たっぷりの言い方に
少し気持ちが軽くなって
クスクス笑った私を

ユウキはまたギューっと抱きしめ
頭に顔を埋めるみたいにして
深く長い息をはいた。


「マジでよかった
お前が無事で。

探し回ってる間
生きた心地がしなかったよ。
お前になにかあったらって、
不安で不安でどうにかなりそうだった」


嘘でも演技でもないユウキの言葉に
また胸がせつなくなって

頭に浮かんで来た疑問
口に出しそうになるのを
無理矢理飲み込んで我慢する。


……どうしてそんな風に
思ってくれてるの?

あの日海で出会ったのは
本当に偶然?


――大切な女って誰?

ケンの言葉を信じるなら
それってもしかして
私……なの?