「そう、自分のすべてを
投げうっても構わない程の、
側で見守りたい
スッゲー大事な女。

そうでなきゃあんな才能持った
本気で音楽やってる奴が
わざわざ東京離れて
こんな田舎で音楽やる訳ないだろ」

「………」

「だから俺もその女にスゲー感謝してる。
ユウキの後ろで
あんな凄い奴とバンド組めるチャンス
与えてくれたその女に。

そう、例えばこの指全部
くれてやってもいいくらい」

「……それっ…て」


さっきのケンの無謀な行動と
今の言葉照らし合わせたら
出て来る答えは自ずと見えてきて。


……でもまさか、
まさかそんなはずない。


有り得ない事が頭に浮かんできて
微動だに出来ない私の心の中
全部見透かしたみたいな様子のケンは
ニヤリと笑うと怪しげに目を光らせた。


「真相が知りたかったらユウキの部屋
色々漁ってみろよ。
スゲー面白いもん
出て来るかもしれねーぞ」

「何よ、それ」


一体どういう事?
面白いもんって……。


頭の中グルグル色んな思考が絡み合い
無言で考え込んでるうちに

目的の病院に着き
人気のない駐車場に
荷台から軽々と飛び降りたケンは
こっちを振り返って
ハタと顔をしかめて大声をあげた。


「やっべー!
お前が見つかったって
ユウキ達に連絡すんの忘れてた。
アイツらきっと
今も無意味に走り回ってるっ!」