「もしもし?」

『アキー!
やっとつながった。
何で携帯出ない訳?
今どこにいるの?』

「サクラ。
ごめん着信気付かなかった。
どうしたの?なんかあった?」

『何かあったじゃない!
今日練習だって伝えてたでしょ?
ライブ本番まで時間ないんだから。
6時にいつものとこ。
来れるでしょ?』

「練習か。
あー、うん。
大丈夫、行くから」

『そ、よかった。
それじゃあとでね〜』


いつもの通りのエネルギーにあふれた
サクラの声を浴びて
軽くため息をついて携帯の通話を切ると

いつからそこにいたのか
少し離れた床にあぐらをかいて座り
口に咥えた煙草に火を付けながら
私をジッと見てくる。


「友達?」

「……同じ、学校の」

「練習って何の?」

「バンドの練習」

「へぇバンド。
お前何のパート?
もしかしてボーカル?」


一体どこから会話を聞いてたんだろう。

たたみ掛けるような質問に
眉を潜めながら
でも別にあえて隠すような事じゃないし
素直に詳細を伝える。


「違う。
ギター」

「……ギターか。
で、練習って何で?
ライブでもあんの?」

「そう、今週の日曜」

「日曜ってあと5日しかねーじゃん。
ふーんなるほどな」


そういって深く煙を吐き出す。

灰皿に灰を落とす手が
不機嫌そうに揺れた。


このビリピリとした空気は
さっき砂浜で感じたものと
同じ種類の物だと気付いた時
彼がまた毒々しい視線を向けてきた。