「冗談だよね?」って訴えようとしたけど
私の目を真っすぐに見つめるケンの顔は
真剣そのもので

それを証明するかのように
ナイフを握った手の甲に
力を込めた時に出る血管が
何本も浮かび上がってる。


「やめてよ。
何でこんな事するの?
私が死のうが生きようが
あんたには関係ないじゃん」

「いや、それが結構関係あるんだよね。

お前が死んだら
ユウキは多分歌えなくなる。
……これ以上大事な人間無くしたら
多分」


……これ以上ってだれ?
お父さんか、私の知らない人?

それに私は別にユウキの大事な人でも
何でもないのに。


「そんな訳……。

それ以前に
あんたがベース
弾けなくなったらどうすんのよ!」

「いーんだよ俺は
そもそもデビュー出来るのも
アイツのおかげだし。
俺は元はそんなタマじゃねーんだ」


少しだけ寂しそうな口調で
そう話ながらも

更に掌の力込めていって
尋常じゃない量の大粒の血液が
流れ落ちてるから

凄く怖くなって
悲鳴みたいな声を上げる。