ケンはそんな私の言葉をシカトして
変わらずナイフを握ったまま
突然の事で呆然と立ちすくむ男に向かって
ゆっくりと視線をうつした。


「あのさ〜
女に向かって刃物向ける小物が
いつまでそこにいんだよ」

「な、何だと!」

「それにさーこーゆーもんは
切り札的に隠し持ってこそ意味があんだよ。

最初っからチラつかせやがって
自分は喧嘩慣れしてない
見せかけヤローって事
露呈してるだけだぜ?」

「テ、テメエ!」


明らかに頭に血が上った様子の男は
持ってたナイフから手を離して
そのままケンに殴り掛かると
ケンは軽々とその拳を避け

ガンッて
左手でそいつの事思いっきり殴り付け
コンクリートの地面の上に吹っ飛ばした。


――明らかな力の差。


当然後ろの二人も
動揺を隠し切れない様子でいると
ケンは何も写さない
暗く鋭い目でそいつらを見て


「テメエらも殺されたくなかったら
さっさと消えろ。
ほら10秒以内」


そうして面白がって
カウントを取り始めたケンから

逃げるように
二人はコンクリートの上でノビてる
金髪男を担ぎあげて
慌てて車で去って行った。