「ちょっと待てよ
どこ行くの〜?」


さっきの金髪男は
私を無理矢理自分のほうに振り向かせると
掴んだ腕をゆっくり指で撫でながら
わざとらしい声を上げる。

気持ち悪さと拒絶反応で
全身ににトリハダが立つ。


「シカトとか酷くねぇ?
具合でも悪いんじゃねえかってさ
心配してわざわざ車止めたのに。
俺達優しいっしょ?」

「……だ、大丈夫」

「本当に〜?
声震えてるし
顔色も悪くねぇ?」


そう言って私の黒髪をすくいあげて
耳元に触れてきそうになったから


「や、ヤダ!」


バシッって鋭い音が
金髪の男の頬から静かに響いた後は
私達の様子を
遠巻きに眺めてた後ろの二人が
楽しそうに口笛を吹いてヤジを飛ばす。


「マサ大丈夫〜?
何お前やられてんだよ。
ダッセエヤツ」

「てか“ヤダ”だってよ
かーわいーぃ」


マサと呼ばれた男は
少し赤くなった頬を撫でながら
さっきより更に鋭くなった獣のような目で
私をジッと見た。


「……イッテェ。
いきなり殴るとか結構気が強ーのな。

でもあんまり抵抗すると
自分の首絞めるだけだぜ。
大人しくしてれば
悪いようにはしないからさ」

「……ッ!」


口調は軽いけど
その言葉の意味にゾワリと背中が震えた。


何でこんな人間が世の中にいるんだろう。

自分の目的ばかり大事で
人を傷付ける事を何とも思わない人種。

――最低の奴ら。


状況は最悪だってわかってるけど
こんな奴らに絶対に屈したくなくて
嫌悪感を表すように
思いっきり目の前の金髪男を睨み付けた。