「ケイがしてるのは
決して大袈裟でも
過剰な事でもなんでもない。

今では日本も治安
悪くなってるって聞くし、
アメリカよりは大分ここは安全な国だけど
やっぱり子供を守るのに
やりすぎって事は絶対ないんだ。

自分ではあんまり
気がついてないと思うけど
アキはその髪の色と、容姿とで
やっぱり他の子供より目を引きやすい。

しかも有名なジェフの娘だし
それだけでも狙われる理由は十分にある」

「ね、狙われるって……」


淡々とした口調で語られる事実が
なおさら現実味を帯びて聞こえて
怖くなって声が震える。


そんな自覚
本当に丸っきりなかったから。


「世の中に悪い奴なんて
それこそ無限にいる。
アキが想像してるより遥かにね。

そーゆー奴らから
アキを守らなきゃいけないって
半ば使命みたいにケイが思ってるのは
凄く当たり前の事で

ましてや父親も母親も
近くにいないとなると
どうしたって自分が責任持たなきゃって
思いになるのは当然だろ?
アキはたった一人の
アイツの妹なんだから」

「………」

「――現に今だって、
アイツ試合やりながら三分に一回は
こっち見てるって知ってた?

アキに何か起きてないか
危険に晒されてないか
それに、泣いてないかとか
色々確かめてる」

「え……」


驚いて顔をあげると
ちょうどケイがこっちを見てて

私達と目が合ったことに気付くと
こっちの会話の内容なんて
全く知らない様子で

冗談っぽく中指を立ててきたから
三人揃って吹き出したように笑う。


「もしさっきマイクがいなかったら
それに今俺らがここにいなかったら

きっと今アイツは
こんな風にアキから離れて
普通にボール追いかけるなんて事
絶対にしてないよ」


……それって。


「じゃあ今二人が
ここにいるのって」


やっと気付いた事実に
まじまじと二人の顔を見つめると
フィルは照れたように視線を外して
ヴィンスはそんな彼に苦笑い。