そんなの想像もしてなくて
ケイの言った事を受け止めきれずに
更に言葉を返そうとしたら
私の手首を掴む力が強まった。


「痛っ!」

「そんなに信じられねーなら
俺が今わからせてやるから
抵抗してみろよ」

「……きゃあ!
ちょっとケイ!
冗談だよね?」

「これが冗談に見える?
安心しろよ
舌は入れないから」


……あ、有り得ない。


掴まれた両手ごと床に押し倒されて
ケイの身体が私に影を作る。

徐々に迫ってくる顔を見ながら
何とか逃れようともがいたけど
腕が1ミリたりとも動かず

足をバタつかせることしか出来なくて
でもそんなのケイには
まるでこたえてない様子。


「ケイ、やだ
こんなのやだよ」

「………」


静寂な部屋に響いた
私の縋るような声も
今のケイには全く届いてない。


こ、こんなに力入れてるのに
なんで何にも出来ないの?


どうあがいても越えられない
生まれ持った男女の力の差に愕然として
悔しくて怖くて
奥歯をギリギリと噛み締めた。


……何で?
怖い。
こんなの、ケイじゃない。


それに私を見下ろす灰色の瞳は
いつもの暖かい色じゃなくて
冷たく鋭く
何の感情もないような色をしてたから

更に怖くなって
それ以上その瞳を見れなくて
瞼をギュッと閉じながら横を向いた。


……そうして
横顔にケイの髪が振れ
熱い吐息を感じたかと思ったら――