思考が止まったまま立ちすくむ私の視界に
後ろ姿のケイが
着てたパーカーを脱ぎ捨てるのが見えて

コレ以上は見ちゃいけない気がして
っていうか見たくなくて
後ろを振り返って
慌てて部屋の奥に駆け込んだ。


――急ぎすぎて途中何か機械が
倒れた気がするけど構わず
両耳を塞いで固く目を閉じて
バカでかいスピーカの横に座り込んだ。


もうやだ!
さっさと終われ!

ケイのバカ
ケイのバカ
ケイの大バカ!!


あんなケイは知らない。
知りたくない!


ミニスカートに
ニーハイソックスを履いた足を抱え込み
丸まってジッと
自分が作り出した暗闇無音の世界にいたら

スッと両耳の掌を外されて
再び元の世界に引き戻された。

同時に鼻先に香る
馴染みの香水の匂い。


ゆっくりと目を開けて

私と同じようにしゃがみ込んで
私の両手を掴んだまま
こっちを真っすぐに見る
目の前の人物に呼び掛けた。


「……ケイ」

「アキ、んなとこで何やってんだ?」


薄暗い部屋の中
スクリーンに流れてる映像が反射して
時折明るく見えるケイの顔を
軽く睨み付けながら
その腕をゆっくりと振り払った。


「何じゃないよ!
ケイこそ何やってんのよ?」

「ん?
まさかお前がここにいるなんて思わねーし
悪かったな」


そう笑いながら頭を撫でられて
再び戻ったケイの兄の顔に
モヤモヤしてた気持ちが
少しだけ軽くなる。


「……さっきの、女の人は?」

「適当に理由付けて追い出した」

「ひどーい!」

「別にいいじゃん
かわりの奴なんていくらでもいるし」

「なっ!
ケイってやっぱり
最低男だったんだね」

「人聞き悪ぃなぁ、
仕方ネーじゃん。
ほっといても勝手に女が
つきまとってくんだからさ」