「痛っ!」

「アキ考えてる事
まるわかりすぎ!

そうだな。
その疑問に答えんなら
俺基本的に人間嫌いだしさ」

「……えっ?」


――意味わかんない。


「だからー友達はいっぱいいるけど
本当に気を許してる奴らなんて
スッゲー少ないし。

信頼できない人間と一緒に音楽なんか
死んでもやりたくないだろ?

そもそも一緒にやりたいと
思える奴もいねーし
他にメンバー入れるくらいなら
自分でやった方が早いから
俺ベース弾いてるぐらいだし」

「そうなの!?
ケイあんなに上手いのに」


それにあのベース。

雪みたいに真っ白で
ライトにピカビカ光って綺麗だった。


思わずケイのミニタリージャケット
両手で掴んで訴えたら
ケイは片眉を歪めながら
空を仰いで苦笑いを返す。


「うまくなんかねーよ。
俺よりうまい奴なんか
それこそこの星の数以上いるし。

ってもあんまり練習してねーけどさ。
やっぱ本当にやりたい事とは
思い入れが違うかんな」


そうしてそのままケイは
「もーさみぃから早く帰ろーぜ!
ほらダッシュだダッシュ!」
と冗談っぽく嘆いて
私を右腕に抱え上げて走り出したから

私は悲鳴と笑い声を上げながらも
頭の中では別の事を考えてた。


ケイの“本当にやりたい事”なんて
本人にわざわざ聞かなくても
当たり前にわかる。


――そっか、ケイの一番は
『歌』なんだ――。