――帰り道。

雪はすっかりやんでて
珍しく星なんかが見える空の下
ケイと手を繋いで
石畳の道を歩く。


ケイは白い息を吐きながら
空に向けてた視線を私の方に下ろすと


「アキ、驚いた?」

「驚いたに決まってる。
何で教えてくれなかったの?」

「だってあの日お前
マイクのギターに夢中だったし、
俺としてはあれを越えるインパクトを
演出したいじゃん?」

「だからって
いきなりあんな、ヒドイ!!」


まだ興奮が覚めやらないながらも
頬を膨らませて睨むと
ケイは楽しそうに
ケラケラと笑い声をあげた。


「でもあんなにアキがずっと泣いてるから
実は歌いながらも気が気じゃなかった。
こんなちっさい身体の
どこにあんな水源が?」

「う、ウルサーイ!
からかわないで!

……でもケイもマイクもかっこよかった。
なんかテレビに出てる人みたい
っていうかそれ以上だった!

二人もいつか
あういう人になるんでしよ?
CDだしたりとか!
凄い、凄い!!」


寒さも忘れて、瞳をキラキラさせながら
まるで自分の事みたいに興奮して
まくし立てると

ケイは何も言わずに
黙り込んでしまった。


「ケイ、どうしたの?」

「別に。

……アキ、あのさ
俺はプロになりたいとか
CD出したいとか
全く思ってないんだよね。
そーゆーのにあんまり魅力感じない。

今のままで十分
好きな音楽を好きなように
自分のやりたい時に自由に出来れば
それだけで満足なんだ」

「ふーん、そう なんだ。
でもあんなにマイクもケイも凄いのに
お客さんもいっぱい拍手してたよ?

もっと色んな人に聴かせればいいのに。
きっとケイの歌聞いたら
みんなびっくりするよ!」

「そういう事ならダイジョーブ!
アキにはちょっと難しいかもしんねーけど
お前インターネットってわかる?」

「ウン少しは。
学校の授業でこの前パソコン触った」