フロア前方に歓声が上がった後
ギターを抱えたマイクがステージに登場。

興奮のあまり思わず立ち上がり
彼の姿を凝視する。


凄いな〜マイク!
でも緊張とか全然してなさそう。

……それにしてもケイどうしたんだろう
一緒にライブ見たかったのにな。


少し沈んだ気持ちで
ステージを見回した所で
ありえない光景に身体が固まった。


……えっ?何で!


マイクの右に立ってる人って
まさか――。


「……ンス!ヴィンス!
な、何でケイがステージにいるの?

そ、それにケイが持ってる
白い楽器ってギター?
ケイもギター弾いてるの?」

「違うよ、アキ
ケイが持ってるのはベースだよ」

「ベー……ス?」


“何それ?”って聞こうと思った
私の口を塞ぐように
ギュィーンってバカデカイ音が響いた後
狭いフロアが爆音に包まれた。


何これ。

生の楽器の音って
こんなに大きくて
身体にズシズシ突き刺さってくるんだ。


この頭グラグラする音がギターで
お腹にズシズシ響いてくるのがベース?

奥にあるのはドラムだよね、多分。

叩いてる人は見た事ないけど。


……凄い
上手い下手とかよくわかんないけど
この音聞いてると身体中熱くなって
自分の心臓の音がうるさくなった。


「ヴィンス凄いね。
ケイもマイクも、いつもと違う人みたい」

「……まだ
驚くのは早いよアキ」

「えっ?それってどういうっ……」


………!!!


一旦ヴィンスの方を向きかけた私の顔が
またステージに引き寄せられた。