驚いて理由を尋ねようとしたら
それに被さるように
男の子の団体に声をかけられた。


「Hey!ヴィンス!元気ー?
ってか今日はずいぶん珍しいツレだな
もしかしてお前の妹?」

「いや、ケイの」

「ええっ!!?」

「嘘だろ……世も末」

「ありえねぇ!!」


そう叫びながら彼らは
マジマジと私を見てくるから

さすがに慣れない人はまだ怖くて
助けを求めるみたいに
ヴィンスの紺のパーカーの裾を掴むと


「ベン、そういえばさっき
メリッサがあっちのカウンターんとこに
いたみたいだけど」

「うっそ!
教えてくれてサンキューヴィンス。
今日こそメリッサ口説いてみせるぜ!
んじゃあお前ら行こうぜー」

「おーう!」


そうして私達の席の周りは
再び静寂に包まれた。


「あの、ありがとう」

「んーん、別に
あいつら悪い奴じゃないんだけど
ちょっとうるさかったしね」

「でも平気?
本当はヴィンスも友達とか
可愛い女の子とかと一緒に過ごしたい?」

「ハハッ!そんな事気にすんなよ
俺がアキといたいんだし。
それにアキより可愛い女の子なんで
いる訳ないじゃん?」


………。


年なんか超離れてるし、
こんな子供相手に
冗談だってわかってるけど
思わず顔が赤くなった。


……ホントヴィンスは優しい。

ケイも優しいけど
彼とは違うストレートな優しさだ。


「でもなんでケイに妹がいると
世も末なの?
学校でのケイってどんなの?」

「それは知らない方がアキの為かも。
言っとくけどアキの前のケイとは
180度違うから」

「アハッ、そうなんだ。
……それにしてもケイ遅いね」


コーラを飲みながら
周りをキョロキョロ見ると
ヴィンスが腕時計で時間を確認しながら

意味ありげに
「もうすぐ来るよ」と言った所で
フッとフロアの電気が消えた。