「俺さ、嘘でも何でもなく
いつも心の中どっか穴開いたみたいな
満たされない気持ちで
これまで過ごしてきて。

それはきっと母親が死んだからだって
ずっと思いこんでたけど
そうじゃなかったんだ。

お前に会った途端
抜けたピースが埋まるみたいな、
そんな不思議な感覚がした。
きっと魂が無意識に
お前の存在探してたんだ。

だからさ、これからは今までの分
取り返すぐらいずっと一緒に過ごそうな?」

「うん!!」


――すごい。
ケイは私の欲しい言葉いっぱいくれる。

凍った私の心
少しづつ溶かしてくれるみたいに。

今までずっと寂しくてしかたなかったけど
これからは一人じゃないんだ
――ケイがいるんだ、私には。


込み上げてくる物を隠すように
ケイの胸にしがみついたけど
Tシャツ一枚の彼はきっと濡れた感覚で
私の涙をわかってるんだろうな。


「……ケイ?」

「ん?」

「それじゃあケイも
誰かと寝るの初めてだよね?
一緒に初めてとかなんか嬉しいよ」

「あっ、うーんと
いや、別に……あれだよ」

「ん?何?
どうしたの?」

「初めてじゃ、ないかも」

「えーそうなんだ。
じゃあ誰と?子供の頃?」

「……えっと」


……?
いきなりどうしたんだろう。

なんか焦ってるみたいだし
身体強張ってるし。


「まー誰だっていーじゃん
そーだ!
マイクさ、実はバンド組んでるんだけどさ
今度ライブあるから見に来いよ」

「ホントに?
うん!行きたい行きたい!
凄いね、マイクバンド組んでるんだー」

「ああ、見たら
お前、絶対驚くよ」

「そうなの?」


何だろう驚くって?
マイクの演奏あれ以上に凄いって事かな。


意味深に笑うケイに全く気が付かずに
そんな検討違いの事を想像してた
私の頭の上で


「ウン、賭けてもいいよ。
絶対ね――」