不思議に思って首を傾ける私の頭を
ケイはポンポンと撫でながら


「アキ、さっき何の為に
ハケ4本買ったと思ってるわけ?」

「予備かな、とか」

「フッ俺がそんなに用意周到な
性格なわけねーだろうが」


……確かに。


目の前で楽しそうに笑うケイの背後には
未使用のハケが二本床に転がってて。

って事はやっぱり――。


―――――


ガタガタガタガタッ!
バンッ!


「YeahhhhHHH!!」

「Heeyy!!!」

「………」


あれから完璧に寛ぎモードのケイと
待つ事11分弱。


部屋の外で騒がしい音が
聞こえたかと思ったら
勢いよくドアが開き
雄叫びを上げながら誰かが入ってきた。


「あーさみーさみー
外超吹雪!

10分以内とか無謀な事言うから
凍った道スケボーで
かっ飛ばして来たら
スリップして雪山に突っ込んでんの俺。
超笑える」

「ハハッ!
あれは確実に死んだと思った!
んでフィル救出してたら
思わぬロスタイム
なぁ時間間に合った?

あれ?ていうか何この部屋
メルヘ〜ン……でも臭!!」

「………」


余りの騒がしさに目を
白黒させてると
ケイが意地悪そうな顔で笑い
立ち上がって彼らに近づいた。


「残念〜
ギリ間に合わなかったし!

フィルのあの事
サリに言うのは当たり前だけど
あとお前らお詫びに壁塗り手伝え」

「えぇー!ひでーよ、ケイ
レナとの事はつい出来心だったんだよー。

いくらでも手伝うから
それだけは勘弁して!
ほらヴィンスも何とか言ってくれよ」

「俺には関係ないし、
あれはお前が悪い。

それにしてもケイ。
壁塗り直すなら床だけじゃなくて
ちゃんと家具にもカバーかけて
あと換気もこまめにやんねーと」

「ふーん、そうなん?
やっぱお前は
こーゆーとき頼りになるな。

マジで手かしてくれよ。
俺のかわいい妹の為にもさ」

「「妹!?」」