もたつく身体を無理矢理早く動かして
砂浜にたどり着いた。


ガクガクと膝が震えて
同時に足の裏の傷に小さな小石が触れ
痛みのせいで転がるように
その身体の側にしゃがみ込んだ。


横たわる顔を恐る恐る覗き込む。

全身ずぶ濡れになって
黒髪からポタポタと水滴が流れ
その頬に落ちた。


――ダークブラウンのさらりと長い髪
瞳は固く閉じられて
すっと通った鼻筋
少し日に焼けた肌。


歳は多分同じぐらいだけど
他の部分はどこをとっても
ケイと似ても似つかない。

当たり前に別人――。


深い絶望感に襲われながらも
それでも微動だにしない
その人が気になって
小刻みに震える手を持ち上げて
その頬に触れようとした。


もしかしたら死んでるかも
なんて思いながら
ゆっくりと指先を近づけていく。


何故か心臓が
ドキドキと激しく高鳴った。


あと5センチ…4センチ
3…2…

そして
あと少しで触れそうになった時――

急にその人の両目がパチリと開き
同時に手首をすごい強さで掴まれた。