――胸まで浸かった所で
視界に白い何かがうつって
思わず顔をそちらに向けた。


どこから流れ着いたのか
すごい数の真っ白い花が何本も何本も。

私の身体を取り囲むように
海の表面を漂って
ユラユラと流れていた。


まるで私がこれからする事を
知ってるみたいに
しつこく私の身体に纏わり付く。


流れる花を目で追うように
顔をやや後ろに向けた私の視界に
ふと写りこんだもの――。


さっきまではいなかったのに
砂浜に寝転ぶ人の姿。


少し気になって目を細めると
それは男の人で
デニムを掃いた足を投げだし
片膝をたてて

黒いTシャツから伸びた両腕を大きく広げ
微動だにしない。


遠目に見えたその姿が
体つきが
醸し出される空気が

あの人の、ケイの姿に見えて
考えるより先に身体が反応した。


急いで振り返り
もと来た道を辿る。

水の抵抗のせいで身体の自由が効かずに
もがくように海の中を走った。


――こんなことあるわけないけど
ケイが、ケイの身体が
海の中を流れて、流れて
この海岸までたどり着いたのかもなんて。