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加奈子の恋はまったく進んでいなかった。

安田優太への思いが、
ただ膨らむだけだった。


それでも加奈子は満足だった。


久しぶりに人を好きになって
こんな楽しい気持ちを味わえるだけで
加奈子は幸せだった。



好きな人が髪を切っただとか、
好きな人の部活が分かっただとか、
好きな人がメガネをかけた所を見れたとか、



そんな些細な事で加奈子は幸せだった。



去年は冷えていたこの教室が
今年は少し暖かく感じた。


上靴に落書きをしている女の子も
そんなに気にならなくなった。