「すいません…送って頂いて…」
「あぁ、なんてことない」
「申し訳ありません…」
「―…
お前、何か好きな食べ物はあるか?」
「えっ?!」
いきなり喋り出したかと思うと
なぜか好きな食べ物を訪ねられた
「え〜っと〜…
あっ!桃がおいしゅうございますね」
私は素直に一番好きな食べ物を言った
「そうか…桃か…」
それだけ聞くとまた黙られた
本当に口数の少ない
まさに武将といったお方
あっという間に家に着いた
私の家は町の酒屋
商売人の父と母、それに弟と暮らしている
私が立派な武将に送られて来たもんだから
父さんも母さんも口をあんぐりあけている
まさかこのお方が
あの赤美城の滝次様だとは思っていないだろう
「私の父と母です」
滝次様に2人を紹介すると父さんと母さんが頭を下げた
「そして、このお方は
あの赤美城の嶺井滝次様」
父と母は放心状態