明日香ちゃんはお腹を抱えて笑っていた。

『お前はそんなことでいつまでも落ち込んでたの?
もう、怒られたんでしょ?
もう、誰も怒ってないから元気だしな。
そんな落ち込んでる顔してると可愛くないぞ』

そう言って僕を抱きしめてくれた。

でも、その後真剣な顔でこう言った。

『今回は、お兄ちゃんだったからいいけど、
他の家の人とかだったら、保健所行きかもしれないんだぞ。
そんなことになったら嫌だから、みんな怒るんだ。
わかったか?間違っても他の家の人に飛びついたり、
噛んだりしたらだめだからな。
お前はおっきくてかわいいけど、
おっきいと怖がる人もいっぱいいるんだからな』

そう言ってまたたばこを吸いだした。
明美ちゃんも怒らなかった。
『まったくもう。クロは』
って言いながら、ご飯をいつものようにくれた。

怒っていた三洋君と将一君もすぐに何もなかったかのように
僕をかわいがってくれた。

この家族はみんな違う性格しているから
成り立ってるんだって僕は思った。


僕の背はおっきい。
立つと、明日香ちゃんよりおっきいんだ。
おっきいからかわいいんだってみんな言ってくれてたけど、
その分怖がる人もいっぱいいることを教えてくれた。

その日から僕は間違っても他の人に飛びついたりしないようにした。
この家から連れ出されるのは僕も嫌だから。