クロ…。

僕の名前だ。

明日香ちゃんが、
『飼い主見つかっていなくなるなら、
色が黒いからクロでいいでしょ』
って言ってつけてくれた。

この家の子供になることが決まっても
クロから名前が変わることはなかった。

なぜだかわかんないけど、クロって言う名前がしっくりきていた。

この家に来てから、毎日いっぱいかわいがってもらって
とっても幸せだった。
つい最近まで一人でいたのが嘘だったかのように
ずっと長い間この家にいる気分だった。

僕がこの家に来てから、
最初の日曜日。

明日香ちゃん以外はみんなが家にいた。
明日香ちゃんは彼氏の家に泊まりにいっているらしい。

三洋君はお昼過ぎに起きてきた。
今日の天気は晴れ。

散歩に行きたくて
『三洋君、散歩に行こう』
って誘ってみたけど、起きたばかりでまだ眠いのか
三洋君は、
『将一に連れて行ってもらえ』
と言って、茶の間に行ってしまった。

すぐに将一君が来て
『クロ、どっか行きたいのか?
公園でも行くか』
と言って、僕を連れ出してくれた。

もちろん、杏里ちゃんも一緒。
僕を車に乗せてくれて出発。

近くの公園はとっても広くて、芝生がいっぱいあった。
少しの間ゆっくり散歩していると、
将一君が僕を連れて走り出した。

僕は楽しくなって、とってもはしゃいでいたんだ。
はしゃいだ僕は将一君にじゃれてしまい、
将一君を噛んでしまった。

『いてぇ。何やってんだ』

僕は怒られてしまった。

そのあとも、将一君と杏里ちゃんは僕を連れて遊んでくれたけど、
僕は怒られたのがショックで
あんまり楽しめなかった。